給与明細に記載する項目とは?作成手順から効率化の方法を徹底解説!

企業の人事や総務において、「給与明細の作成」は特に重要な業務の1つです。
給与明細の作成は、法律を順守しなければならないため、記載項目や給与の計算方法ついて正確に把握しておく必要があります。給与明細は従業員の給料に関わる大切な書類であるため、勤務時間や残業手当などの計算にミスがあってはなりません。

しかし、初めて給与明細を作る際、作成の手順や、記載する項目について悩むことも多いでしょう。そこで今回は、給与明細の記載項目と、給与明細を効率良く作成する手順を解説します。

1.給与明細には発行義務がある?

 

労働基準法では、給与明細の受け渡しについては義務付けられていません。しかし、給与から控除した金額が分かるように、支払明細を渡すことが義務付けられているため、従業員に対し給与明細を発行する義務があります。

「所得税法」「労働保険料徴収法(※1)」「健康保険法」「厚生年金保険法」においては、以下のような記述があります。

所得税法(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)第二百三十一条
居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
(引用元:総務省行性管理局「e-Gov 電子政府の窓口・所得税法」)

 

労働保険の保険料の徴収等に関する法律(賃金からの控除)第三十二条(※1)
事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、前条第一項又は第三項の規定による被保険者の負担すべき額に相当する額を当該被保険者に支払う賃金から控除することができる。この場合において、事業主は、労働保険料控除に関する計算書を作成し、その控除額を当該被保険者に知らせなければならない。
(引用元:総務省行性管理局「e-Gov 電子政府の窓口・労働保険の保険料の徴収等に関する法律」)

 

健康保険法(保険料の源泉控除)第百六十七条3
事業主は、前二項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。
(引用元:総務省行性管理局「e-Gov 電子政府の窓口・健康保険法」)

 

厚生年金保険法(保険料の源泉控除)第八十四条3
事業主は、前二項の規定によつて保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。
(引用元:総務省行性管理局「e-Gov 電子政府の窓口・厚生年金保険法」)

上記の他にも、厚生労働省が発表している「労働条件・職場環境に関するルール」にて、「従業員に給与明細書を交付する義務がある」と明確に記載されているため、従業員には給与明細を交付する必要があります。

 

労働条件・職場環境に関するルール(所得税法第231条)
所得税法では、給与を支払う者は給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなくてはならないと定められています。したがって、会社には従業員に給与明細書を交付する義務があり、給与を支払う際に交付しなければいけません。
(引用元:厚生労働省「ホーム|厚生労働省・労働条件・職場環境に関するルール|厚生労働省」)

1-1.給与明細の記載項目

給与明細の記載項目は、「勤怠項目」「支給項目」「控除項目」の3種類に分けられます。

以下は、それぞれの項目に記載する内容を表にまとめたものです。

記載内容
勤怠項目 ・出勤日数・欠勤日数・出勤時間・残業時間・深夜残業時間・休出時間・有給日数・有給残日数
支給項目 ・基本給・残業手当・深夜手当・休日手当・役職手当・通勤手当・総支給額
控除項目 ・雇用保険料・健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・所得税・住民税・控除合計額・差引支給額

〇勤怠項目

勤怠項目は、出勤・欠勤日数などを記載する項目で、給与支給額を決定する上で必要となる項目です。
出勤・欠勤日数や、残業時間などを記載することで、従業員は支給額や残業代に間違いがないか、自分でも計算することができます。また、有給日数や有給残日数を記載することで、従業員は残りの有給日数を把握することが可能です。

〇支給項目

支給項目は、勤怠項目から計算された給与を記載する項目です。
労働基準法では、「労働者が時間外労働をした場合、割増賃金を支払わなければならない」と定められているため、従業員が残業した場合は、通常の給与に残業した金額を記載しましょう。

また、企業によっては、役職手当や通勤手当などが規定されている場合があります。時間外手当とは別に、支給される各種手当がある場合は、残業手当の他、役職手当を支給項目に記載しましょう。

〇控除項目

控除項目は、給与から法律や労使協定によって定められた、控除する保険料や税金などを記載する項目です。
控除項目に記載する差引支給額とは、総支給額から控除合計額を引いた金額を指します。

2.給与明細を作成する流れ

>給与明細を作成する際は、まずは給与計算に必要な情報を集めましょう。

給与明細を作成するにあたり、必要となる書類は以下の通りです。

  • ・タイムカード
  • ・健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
  • ・住民税課税決定通知書
  • ・健康保険・厚生年金保険の保険料額表
  • ・雇用保険料率表
  • ・給与所得の源泉徴収税額表

また、労働安全衛生法の改正により、2019年4月からタイムカードなどの客観的記録による勤務管理を行うことが義務付けられました。タイムカードがなくても、ICカード・パソコンの使用時間など、厚生労働省が定める方法で適正把握された記録が必要となります。

「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」「雇用保険料率表」「源泉徴収額表」は、全国保険協会や厚生労働省、国税庁のサイトからダウンロードすることができます。

続いて、給与明細を作成する流れを説明します。給与明細を作成する際は、それぞれの計算方法に注意しましょう。

給与明細の作成手順

①勤務時間・日数を集計する タイムカードに記載されている情報から集計します。
従業員が有給休暇を利用した場合は、有給残日数も計算しましょう。
②残業や休日出勤・役職手当などを計算する 残業手当は、残業時間・深夜残業時間・休日出勤した時間から残業手当を算出します。
また、役職手当や通勤手当など、企業が独自に規定している手当がある場合は、該当する手当の金額を出します。
③給与の総支給額を計算する 基本給に残業手当や通勤手当などの手当を加算することで、算出できます。
④控除額を計算する 控除額となる健康保険料と厚生年金保険料は、従業員の4~6月の総支給額を平均した標準報酬額をもとに計算します。
所得税は、「課税所得金額」×「税率」-「税額控除額」で算出できます。
住民税は、自治体から送付される「住民税課税決定通知書」を参照して記載します。
もしも書類がない場合は、各自治体で手続きすれば入手することが可能です。
⑤差引支給額を計算する 総支給額から各種控除を引いて算出します。
初任給の場合は、社会保険料や住民税などは控除されないケースがあるため、注意して計算しましょう。

3.給与明細を作成する際に注意すべき2つのポイント

基本的に給与明細の作成は、人が処理する作業であるため、計算ミスが起こらないとは限りません。一度計算ミスを起こしてしまうと、再度給与明細を作成するといった余計な手間を増やすこととなります。

計算ミスや漏れを防止するためにも、いくつかのポイントおさえて給与明細を作成しましょう。事前に作成の注意点を把握しておくことで、きれいな給与明細を作成することができます。

ここからは、給与明細を作成する上での注意点を具体的に紹介します。

3-1.給与計算のルールを設ける

給与明細を正確に作成するためには、会社でルールを明確にすることが重要です。例えば、日割りの計算方法や、休暇の扱いに規定がない場合、給与の計算ミスを起こす可能性もあります。

計算ミスを起こさないためには、会社の就業規則を明確に規定し、規定内容を把握した上で給与を計算することが大切です。会社のルールを確定させることで、計算ミスを起こすことなく、スムーズに給与明細を作成することができます。

3-2.ダブルチェックを行う

 

中小企業など会社員が少ない場合は、1人が専任して給与明細を作成することも多いでしょう。しかし、給与計算を行う際は、人事担当者が少なくても、ダブルチェックを行い、ミスがないかをしっかり確認しましょう。

ダブルチェックを行う際は、2人が同時に同じ情報を見ながら指差ししたり読み上げたりする「同時チェック」、2人が時間を空けて同じ情報を確認する「時間差チェック」がおすすめです。

4.給与明細を作成するなら「労務管理システム」がおすすめ

給与明細の作成は、作成項目が多い上、計算方法も複雑です。しかし、「労務管理システム」を利用することで、従業員の入社・退職手続きをスマートフォンで管理できたり、給与明細の作成を効率良く行ったりすることができます。

給与明細を電子化することで、印刷代が大幅にカットでき、出張の多い従業員にもすぐに給与明細を配布することができます。また、労務管理システムを導入することで、給与明細の電子化だけでなく、給与業務を統合することもできるため、効率良く業務を進めることが可能です。

5.まとめ

給与明細を作成するにあたり、事前に必要となる書類や手当の算出方法などを知っておくことで、給与明細をスムーズに作成することができます。

しかし、給与計算を人が行う場合、計算ミスが生じる可能性があります。そのため、給与明細に記載する基本給や手当などの計算を行う際は、計算ミスを起こさない工夫を会社全体で行うことが大切です。労務管理システムを導入することで、労務管理を簡単に行えるため、人事労務の仕事時間を大幅に削減できます。

効率良く生産性を上げるためにも、労務管理システムを利用し、計算ミスによる手間をなくしましょう。

※当記事の内容について、一切の責任を負いかねます。

 

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