算定基礎届とは従業員の社会保険料や保険給付金を見直すための届け出のひとつで、毎年1回行われる定時決定の手続きに必要な書類です。
今回は毎年決まった時期に行う算定基礎届の提出方法や算定方法、作成方法など必要な手続きから作成時の注意ポイントまでご紹介いたします。
以下の条件があてはまる従業員は算定基礎届の対象外です。
4月~6月は昇給や減給が多いタイミングのため、給与水準が変動する従業員が増えやすい時期でもあります。また、4月~6月に支払われた給与平均額と標準報酬月額と大きく乖離する(2等級以上)従業員がいる場合、「被保険者報酬月額変更届(7月改定者)」の提出が必要です。
算定基礎届は、原則毎年7月1日から7月10日の間に提出します。提出先は該当する保険組合によって、異なります。
※暦の関係上、毎年、提出時期が前後する場合があります。
加入している保険組合 | 提出先 |
---|---|
全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ) | 事務センター(年金事務所) |
組合管掌健康保険(健康保険組合) |
事務センター(年金事務所) |
厚生年金基金 | 厚生年金基金の事務所 |
組合管掌健康保険(健康保険組合)の場合は、事務センター(年金事務所)と健康保険組合のそれぞれに提出が必要です。
算定基礎届は紙媒体・電子媒体(CDまたはDVDなど)を使った窓口持参や郵送、インターネットを利用した電子申請が可能です。
※詳細の提出方法は日本年金機構公式ホームページに掲載される最新年度(2019年度は「令和元年の算定基礎届の提出について」)をご確認ください。
【参考】日本年金機構公式ホームページ(https://www.nenkin.go.jp/)
算定基礎届は標準報酬月額を決定するために必要な書類です。届出に正確に記入するためには標準報酬月額の算出方法や報酬対象となる項目を理解しておかなければいけません。
標準報酬月額は毎年4月~6月に支払われた報酬(手当を含む総支給額)を対象に、支払基礎日数(その月の報酬を計算する基礎となった日数)で計算します。また、以下の条件が発生した場合、事前に考慮・除外して算出しなければいけません。
※月給制の場合、支払基礎日数は給与計算の前月の締切日の翌日からその月の締切日までの暦日数
※日給数の場合、支払基礎日数は出勤日数および有給日数
※17日未満の場合、その月を除外して計算
※パートタイム労働者の4月〜6月全ての支払基礎日数が17日未満の場合、支払基礎日数15日以上の月報酬を対象
※短時間労働者は4月〜6月の支払基礎日数11日以上の月の報酬を対象
算出対象となる報酬は、金銭に限らない労働の対償が対象です。
対象には以下の支給が含まれます。
※食事代は従業員からの徴収金額が現物給与価額の2/3以上の場合は報酬に含まれません。
※社宅は入居する従業員からの徴収金額が現物給与価額以上の場合は報酬に含まれません。
※画像は平成30年度版です。最新の様式は公開され次第、ご確認ください。
算定基礎届には以下の項目を記入し、届出を完成させます。
詳細の記入方法は「日本年金機構のホームページ( https://www.nenkin.go.jp/index.html)」で公開されている概要やガイドブックをご確認ください。
※画像は平成30年度版です。最新の様式は公開され次第、ご確認ください。
算定基礎届総括表は、主に以下の項目を記入します。
詳細の記入方法は「日本年金機構のホームページ(https://www.nenkin.go.jp/index.html)」で公開されている概要やガイドブックをご確認ください。
保険者算定とは、従業員が置かれている状況によって、通常の算定が難しい場合に適用する算定方法です。加入する日本年金機構や健康保険組合が定めた特別な算出方法で標準報酬月額が適用されます。
保険者算定の適用は以下の場合が考えられます。
業務上の病気やケガが原因で、4月~6月の3か月間に全く報酬を受け取っていない従業員は保険者算定が適用されます。
フルタイム契約の従業員は、4月~6月すべての月で支払基礎日数が17日未満の場合、保険者算定が適用されます。また、パート・アルバイトなどの短時間労働者は、4月~6月の支払基礎日数が11日未満の場合に、保険者算定が適用されます。
産前産後休業や育児休業の取得、介護休業により、4月~6月の間にすべての報酬を受け取っていない場合、従来の標準報酬月額が適用されます。
業務の性質上、4月~6月に業務が集中し、残業代などの手当が増加する企業の従業員は4月~6月の標準報酬月額が実際の報酬金額よりも大きく算出される可能性が高いです。標準報酬月額が1年間の報酬金額の月平均が2等級以上の差が生じた場合、被保険者の同意を得た上で申請書(年間報酬の平均で算定することの申立書)を提出することで、過去1年間の月平均報酬月額が標準報酬月額として認められます。
通常は、4月~6月の給与をもとに標準報酬月額を算定しますが、年間平均を用いた年間算定と呼ばれる方法も存在します。
年間算定で申請する場合は、通常の定時決定に提出する書類に加えて、「年間報酬の平均で算定することの申立書」と「保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等」の提出が必要です。また、例年業務の集中が発生することを確認できる、賃金台帳など資料の提出が求められることもあります。提出方法は通常決定と同じく、窓口での提出と電子申請から選択が可能です。
以下の条件を満たす従業員がいる場合、被保険者報酬月額変更届(7月改定者)を追加で提出しなければいけません。
詳細の条件は「日本年金機構のホームページ(https://www.nenkin.go.jp/index.html)」で公開されている概要やガイドブックをご確認ください。
標準報酬月額の算出元となる標準報酬は以下の内容は含まれません。
賞与は年間の回数によって、標準報酬月額の算定に含む・含まない等の判断が必要です。
算定基礎届(定時決定)は、毎年1回行う社会保険料の標準報酬月額を算出する手続きに必要な書類です。定時決定の申請には算定基礎届と算定基礎届総括表のみで問題ありませんが、従業員の給料に著しい変動があった場合、申請書や追加書類を添付しなければいけません。しかし、窓口持参、郵送以外にも、電子申請でも簡単に行えるため、担当者の業務負担を軽減できます。算定基礎届には、算出対象となる報酬区分や対象者、保険者算定への理解が必要ですので余裕を持った手続きを心掛けましょう。